妊婦のHIV偽陽性は、一般の人たちよりも高い確率で現れます。では、実際にはどのくらいの割合で現れるのでしょうか?

あなたが保健所や病院で受けるHIV検査は通常、スクリーニング検査と呼ばれる検査です。非常に感度の高い検査で、HIVに感染している人を見逃さずに確実に見つけます。

しかし、余りに感度が高いため、実際にはHIVに感染していない人までHIV陽性と判定することがあります。これが偽陽性と呼ばれるものです。そして、この偽陽性は妊婦においては一般の人より高い確率で現れることが分かっています。

ここでは、実際に妊婦のHIV偽陽性が現れる確率をご紹介したいと思います。もしもあなたが妊婦健診などでHIV検査を受けるなら、どうぞこの記事を参考にしてください。

◇一般のHIV偽陽性の発生率

まず、妊婦のHIV偽陽性をお話する前に、一般の人がどのくらいの確率で偽陽性になるのか、そちらを説明しておきます。実はこれは以前にも当サイトで記事にしています。

『HIV検査の偽陽性・偽陰性とは?』

この記事の中で一般の人の偽陽性の確率をご紹介しています。詳しい計算方法は上記のサイトを見て頂くとして、ここでは結果のみ再掲しておきます。

●スクリーニング検査におけるHIV偽陽性の発生する確率

・即日検査(迅速検査)

スクリーニング検査で陽性になった人が確認検査で陰性になる確率=77%


・通常検査

スクリーニング検査で陽性になった人が確認検査で陰性になる確率=50%

こんな数字になっています。

このように一般の人における偽陽性の起きる確率は50%~77%です。つまり、スクリーニング検査でHIV陽性の判定を受けても、50%から77%の人は実際にはHIVに感染していない偽陽性なのです。

詳細な計算方法はこちらから。

『HIV検査の偽陽性・偽陰性とは?』

では、妊婦の場合はどう違うのでしょうか。次に妊婦の偽陽性発生率を見てみましょう。


◇妊婦のHIV偽陽性発生率

妊婦のHIV偽陽性については、いくつかの専門書や公的医療サイトなどが取り上げています。例えば、私の手元にある「HIV/AIDS患者のトラブルシューティングとプライマリケア」(南山堂)によれば、

「スクリーニング検査で陽性となった妊婦が、確認検査でも陽性になったのは8.3%との調査結果がある」

との記事が掲載されています。これからすると偽陽性の発生率は91.7%になります。簡単に言えば、HIV検査受けて陽性判定を受けた妊婦が10人いれば、そのうち本当にHIVに感染しているのは1人で後の9人は偽陽性、HIVには感染していないと言うことになります。

一般の人の偽陽性発生率が50%~77%であることを考えると妊婦の偽陽性発生率はかなり高いですね。

ではもうひとつ興味深い調査結果をご紹介しましょう。

2008年に発表された、『妊婦HIV スクリーニング検査の偽陽性に関する検討』という論文からのご紹介です。詳細はリンク先からご確認下さい。

この論文は神奈川県衛生研究所研が行った調査結果の報告によるものです。調査対象は以下の通りです。

●エイズ拠点病院 全国314ヶ所

●年間の分娩数1000件以上の一般病院・医院 全国43ヶ所

この2種類の医療機関に対して次の項目をアンケート調査しています。

①HIVスクリーニング検査の件数と実施率

②確認検査の件数(スクリーニング検査陽性件数)

③確認検査での陽性件数(本当にHIVに感染していた件数)

この3点をアンケート調査しています。この結果から、

④妊婦の偽陽性率

が分かります。では、それぞれ表にして結果をご紹介したいと思います。

【エイズ拠点病院 全国314ヶ所】

項目 結果
■スクリーニング検査件数 52,825件
HIV検査実施率 89.4%
■確認検査件数(スクリーニング陽性) 58件
確認検査陽性件数 6件
確認検査陰性数 52件
HIV偽陽性率 89.7%
有病率 0.0114%

表1.エイズ拠点病院のHIV偽陽性率

表1のように、全国314ヶ所のエイズ拠点病院におけるHIVスクリーニング検査の総数は52,825件でした。このうち、HIV陽性判定となったケースが58件です。

そこで次にこの58件について確認検査を行ったところ、6件が再度陽性判定となり、HIV感染が確定しています。残り52件については確認検査で陰性となり、HIVに感染していないことが確定しました。つまり、52件が偽陽性だったわけです。

従って、HIV偽陽性率は89.7%ということになります。この値は「HIV/AIDS患者のトラブルシューティングとプライマリケア」(南山堂)に紹介されている91.7%にほぼ同じです。やはり妊婦の場合はHIV偽陽性が高く出るという結果になっています。

では、続いて一般の病院、医院のアンケート結果を見てみましょう。

【年間の分娩数1000件以上の一般病院・医院 全国43ヶ所】

項目 結果
■スクリーニング検査件数 30,140件
HIV検査実施率 98.5%
■確認検査件数(スクリーニング陽性) 26件
確認検査陽性件数 1件
確認検査陰性数 25件
HIV偽陽性率 96.2%
有病率 0.0034%

表2.エイズ拠点病院のHIV偽陽性率

表2のように、一般病院、医院でのスクリーニング検査は30,140件で、このうち26件がHIV陽性の判定結果でした。そこで次の確認検査を受けたわけですが、26件のうち1件だけが確認検査でも陽性となり、HIV感染が確定しています。残り25件については全て確認検査では陰性であり、結果偽陽性だったことが判明しています。

以上の結果から、HIV偽陽性の発生率は96.2%であったことが分かります。

以上の調査結果から、HIV偽陽性をまとめると次のようになります。

●HIV偽陽性の確率

・一般の人 50%~77%

・妊婦    89.7%~96.2%

という結果です。

では、どうして妊婦には偽陽性が出やすいのでしょうか?私も色んな専門書、医療サイトを見て調べましたが、その理由を明確に説明している記事は未だに見つかっていません。


◇それでも確認検査は絶対に必要です

以上のように、妊婦については非常にHIV偽陽性の発生率が高くなっています。もしもあなたが妊婦健診で陽性判定を受けても、決して慌てないで下さい。圧倒的にそれは偽陽性である可能性が高いのです。

しかし、いくら偽陽性の可能性が高いと言っても、必ず確認検査を受けて下さいね。万一本当にHIVに感染していた場合は母子共に危険です。

一般に、母親がHIVに感染したまま出産すると母子感染が発生する確率は30%程度だと言われています。しかし、抗HIV治療を受け、産道感染を避けるなどの処理を行えば、母子感染の確率は1%程度まで下げることも可能です。

今回は妊婦のHIV陽性率についてデータをご紹介してきました。結論として、妊婦は一般の人よりHIV偽陽性率が高いことが分かりました。それでも確認検査は絶対に受ける必要があることを忘れないで下さい。

■このページを見た人はこんなページも見ています。

『あなたはご存知ですか?HIV検査の偽陽性・偽陰性とは?』

『それが一番危ない?知っておきたいHIV感染ルート』

■「もしかして・・・」 HIV感染が不安なら迷わず検査。自宅でHIV検査が出来ます。

STDチェッカー TypeJ(男女共用)
HIV検査のみ

■HIVと最も重複感染が多い梅毒、B型肝炎。症状がより重症化することがあります。

STDチェッカー TypeO(男女共用)
HIV・梅毒・B型肝炎が同時に検査できます。

■検査キットの信頼性についてはこちら⇒検査の信頼性について

■検査キットを使った人のクチコミはこちら⇒利用者の声