HIV・エイズの治療費について

ここでは、HIVに感染したことが検査で分かったあとのHIV・エイズ治療費についてお話します。いったい、HIVに感染すると、どのくらいの治療費が必要となるのでしょうか。残念ながら、現在の医療では一度HIVに感染すると完治することは出来ません。治療は生涯継続することになります。当然ながら治療費の負担は大きな問題です。

まず、HIV感染が判明したからといって、すぐに抗HIV治療が始まる訳ではありません。つまり、まだ免疫力が保たれている間は薬を使うことなく、検査だけを続けて経過を見ます。そして、ある基準以下まで免疫力が低下すると、投薬が始まるのです。

この免疫力の基準として目安になるのがCD4値です。これは、血液1μL中のCD4陽性Tリンパ球の数です。(1μLは、1リットルの百万分の一です。)普通に健康な人の場合には、CD4値は700から1500と言われています。

HIVに感染すると、このCD4がHIV増殖と共に破壊されていきます。免疫機能の中枢細胞であるCD4陽性Tリンパ球が破壊されることによって、人の免疫力はどんどん低下していくのです。このCD4値が200から350程度になると、坑HIV治療を開始します。これ以下の数値にまで落ちると、日和見感染症に感染する恐れが出てくるためです。

このあたりの詳しい解説はこちらから⇒「感染すると、どうなる? その2」

このように、HIVに感染していることが分かってからの治療費は、抗HIV治療が始まるまでと、始まってからでは金額が変わります。抗HIV治療が始まるまでは薬代が不要ですが、治療が始まると必要になります。

抗HIV治療の薬代はかなりの高額負担となりますが、いろんな支援制度があって、それを利用することによって負担を軽くすることが出来ます。実際に患者本人が病院に支払う毎月の医療費としては、次のような概算金額となります。
(データーは、「国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター」ホームページによります。)

●抗HIV治療開始前(薬剤費なし)

初回の診察+検査費用=約¥10,000~¥20,000

再診の検査費用=¥6,000~¥7,000/月

●抗HIV治療開始後(薬剤費含む)

健康保険のみを使った場合=¥60,000~¥70,000/月

健康保険+身体障害者手帳を使った場合=¥0~¥20,000/月

以上が大ざっぱな金額です。では、医療費について、どのような支援制度があるのか、個別にみていきましょう。ここでは、健康保険、自立支援医療、重度障害者医療費助成制度、先天性血液凝固因子障害等研究事業、身体障害者手帳、この5つについて説明します。これらの支援制度を利用すると、先の負担金額は更に軽減されることがあります。

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1.健康保険

◇自己負担
私たちが医療機関で診察や治療を受けたときに通常使う制度です。皆さんもご存じのようにかかった費用の3割負担で済みます。ただの風邪や腹痛程度の治療費であれば、保険適用で数千円で済むでしょう。しかし、坑HIV治療が始まると、1回の薬代は20万円近くかかります。保険を使っても6万円近く負担しなくてはなりません。

◇高額医療費
これがずっと継続すると、当然払えない人もたくさんいます。そこで、健康保険には「高額医療費」と言う制度があります。これは所得によって月額の自己負担の上限が決まっており、それを超える医療費は償還払いされる制度です。償還払いと言うのは、いったん医療費の全額を病院などで払っておいて、後から超過分を申請して戻してもらうやり方です。

月額の自己負担上限額は、所得によって次の3種類に分かれます。

●上位所得世帯=¥150,000+(医療費-¥500,000)×1% (4回目以降は¥83,400)

●一般世帯=¥80,100+(医療費-¥267,000)×1% (4回目以降は¥44,400)

●住民税非課税世帯=¥35,400 (4回目以降は¥24,600)

◇特定疾病療養費
HIVに感染した原因が、血液製剤に起因したものに限定されるのですが、申請して認められれば月額上限が¥10,000となります。血液製剤以外の感染ルートでは認められません。
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2.自立支援医療

HIV感染者が免疫機能障害としての身体障害者手帳を申請して、取得が可能となれば障害者自立支援医療を受けることが出来ます。この場合HIVの感染ルートを問われることはありません。

支援医療の範囲としては、坑HIV治療、免疫調節治療、日和見感染症の予防、及び治療です。これ以外は認められません。また、エイズ指定医療機関で治療を受けることが条件です。全国にあるエイズ拠点病院の中には、指定医療機関でない病院もあるので注意が必要です。

実際の負担額は、患者や保護者の所得によって異なります。例えば、生活保護世帯であれば、自己負担は不要となり、全額支援が受けられます。

また、市町村民税非課税世帯で、障害者本人、または保護者の年収が80万円以下であれば、月額の上限金額は¥2,500となります。同じ条件で80万円を超える場合には、同¥5,000となります。

この他、所得条件によって細かく規定がありますので、詳しくはこちらをご覧下さい。⇒「障害者自立支援方早分かりガイド」

この制度の有効期間は最長1年です。期限が切れたら更新手続きが都度必要となります。詳しくは自治体窓口でご確認下さい。
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3.重度障害者医療費助成制度(障害者医療)

障害者の医療を保証する制度で、治療状況や感染ルートは問われません。利用条件については自治体によって異なるため、事前の確認が必要です。

また、制度としては2項の「自立支援医療」が優先されますが、こちらの制度の方が負担た軽くて済む場合もあるし、また2つの制度を併用出来る場合もあります。これらも自治体窓口で事前確認が必要です。
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4.先天性血液凝固因子障害等治療研究事業

血液製剤によるHIV感染の場合、医療費、入院時の食事療養費、在宅介護サービス費などが全額自己負担なしとなります。この制度は、都道府県別の手続きとなり、保健所か県庁が窓口となります。

詳しくはこちらから⇒「先天性血液凝固因子障害等治療研究事業の実施について」
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5.身体障害者手帳

HIVに感染した人は、「免疫機能障害」として身体障害者手帳の認定を受けることが出来ます。これによって様々な支援制度を受けることが可能になります。認定には感染ルートは関係ありません。

免疫機能障害の認定には、CD4の値や症状によって1級から4級までがあります。等級によって、受けられるサービスが異なります。詳しくは市町村役場の福祉課でご確認下さい。
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6.まとめと問題点

以上のように、HIV感染者が身体障害者手帳を取得して、各種支援制度を利用した場合には抗HIV治療費の自己負担はかなり軽減されます。実際に支払う金額は自己負担ゼロだったり、2万円までだったりします。

しかし、こういった支援制度を受けるためには、申請して認可を受けることが必要です。この手続きに問題点もあります。ひとつには、患者の個人情報、プライバシーの保護です。自分がHIVに感染していることを周囲の人に知られたくない、と考えている人にとってはかなりハードルの高い申請となります。

実際、人に知られるのが嫌で、申請をしない人もいるそうです。そのため、本人が窓口に行かずに郵送で手続きを行う方法や、医療ソーシャルワーカーが代理人となって手続きを行う方法もあるそうです。

また、各申請の担当窓口にHIVに詳しいスタッフがいないケースもあります。個人情報の保護も含めた患者のケアについて、十分な配慮や対応が出来ないケースもあります。

こういった課題を解決するための活動も広く行われています。例えば、「エイズ予防財団」や、「JHC」ではHIV感染者、エイズ患者に対する各種支援事業を行っています。

関連記事:「エイズ治療について」

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【ご注意】ここに掲載した記事は、

「国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター」「横浜市立大学付属病院」「これでわかるHIV/エイズ診療の基本」などを参考にしました。

各制度のご利用に際しては、本記事はご参考にとどめ、直接関連部署窓口へご確認下さい。本記事のご利用はあくまでも自己責任にてお願い致します。

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