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今回は、かなり話題になった本をご紹介します。『薬害エイズ事件の真実』と言う本です。

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◇本のタイトル:『薬害エイズ事件の真実』

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◇編者:武藤 春光、弘中 惇一郎    現代人文社(2008年)  ¥2,000+税

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◇内容
一口で言えば、薬害エイズ事件の被告であった、帝京大の安部英医師の無罪を証明しようとする本です。250ページの本の中で、数々のデータと考察を積み上げ、いかに「薬害エイズ事件」がメディアによるでっち上げであったか、また検察側の捜査が不当なものであったかを説明しています。

【目次抜粋】

序章 安部医師の無罪は当然なのです

第一章 メディアの作りだした虚像とバッシング

第二章 「薬害エイズ」問題と安部英医師をめぐる動き

第三章 エイズ問題の構図とエイズ侵入への行政の対応

第四章 「薬害エイズ」問題の勃発と世界の動き

第五章 血友病という病気と治療法の変遷

第六章 医療におけるベネフィットとリスク

第七章 エイズ問題責任追及の動き

第八章 帝京大の中の医師たち

第九章 エイズ研究班の活動と調査検討委員会

第十章 加熱製剤の治験の真実

第十一章 検察の陰謀

第十二章 否定された安部医師の過失

第十三章 「薬害エイズ」感染・裁判から政府の意思決定の改善を学ぶ

終章 血友病治療と安部医師の軌跡

「薬害エイズ」事件もすでに過去のものになりつつあるのかも知れません。安部医師が逮捕、起訴されたのは1996年、もう14年も前のことになります。そして、2001年に一審無罪判決が出ます。検察側は控訴し、更に裁判で争うことになりました。しかし、公判途中の2004年、安部医師が認知症を発症し、公判停止となります。翌2005年、安部医師は88歳で死亡し、控訴棄却が決定されます。

そもそも、「薬害エイズ」事件とはいったい、何であったか。主に血友病患者に使用された血液製剤がHIVに汚染されており、そのために1800人ものHIV感染者をうみ、500人以上がエイズを発症して亡くなりました。原因は血液製剤の多くをアメリカから輸入しており、原料となる血液がすでにHIVに汚染されていたのです。

この本で取り上げているのは、血液製剤をめぐって、安部医師が1人の血友病患者を死なせたとされる、業務上過失致死罪をめぐる裁判についてです。当時のマスコミの扱いは、安部医師有罪のムード100%でした。当時血友病患者の治療に使われていた非加熱製剤がHIVに汚染されていることを知りながら、一部の薬品会社の 便宜を図るために安全な加熱製剤への切り替えを意図的に遅らせたと報じられました。安部医師は当時血友病医療の第一人者であり、その影響力はとても大きかったと見られていました。

安部医師は業務上過失致死罪に問われたのですが、この罪の成立要件は、文字通り過失があったかどうかです。この本の中でも、その点について安部医師には過失がなかったことを証明しようとしています。安部医師が裁判で過失を問われた責任とは、次のようなものでした。

「安部医師が当時知っていた知識や情報、あるいは当然知っておくべき知識や情報をもって判断すれば、非加熱製剤を使うことにより血友病患者がHIVに感染してエイズを発症するかも知れないと認識出来たはずである。それなのに、安部医師は過失によって非加熱製剤使用の危険性を認識することなく、使用を止めるよう指示しなかった。」

改めて文書にすると、当時安部医師が裁判で問われたのは以上のような責任なのです。私も実は意外だったのですが、安部医師が死なせたとする患者に対して、直接医療行為を行っていたのは安部医師ではありませんでした。当時のマスコミ報道では、あたかも安部医師本人が患者に対して非加熱製剤を使用したように報じていましたが、実はそうではないのです。

当時、安部医師は帝京大学病院第一内科の科長であり、かつ血液研究室の責任者でした。死亡した患者を直接治療していたのは第一内科の別の医師です。しかし、その直接治療していた医師は起訴もされませんでしたし、何ら責任を問われることはありませんでした。もし、その医師が安部医師と同様に業務上過失致死罪に問われたら、日本中で同じように治療を行っていた医師は全員起訴されることになります。

つまり、安部医師一人が業務上過失致死罪に問われたのは、患者に対する直接の医療行為が対象ではなく、治療を行った医師に非加熱製剤を使うなと指示しなかった過失が問われたからです。なぜ、安部医師一人がその過失に問われたかと言えば、安部医師は血友病医療の第一人者であり、他の医師よりも高度な知識、情報を持ち、非加熱製剤の危険性も一般の医師よりも知っていたとされたからです。そして、当時の安部医師の影響力、指導力は大きく、安部医師が非加熱製剤使用の可否を決めていたとされました。

しかし、この本の中では、安部医師が行った医療判断は当時の医療水準からすれば極めて妥当であり、決して安部医師一人が責任を問われる問題ではなかったと、あらゆる角度から解説しています。過失にあたる行為がなかったことを証明しようと書かれています。

世界的にみても、当時の血友病治療に非加熱製剤を使うのは当然であり、誰もその危険性を予知出来なかった、と言うのが安部医師無罪の根拠です。後になってHIVの正体が正確に分かり、非加熱製剤がHIV感染の原因となる危険なものだと分かったが、当時は誰もまだそれを証明した者はいなかった、と言う主張です。事件当時の色んな論文、学会での発表を上げてそれを証明しようとしています。

2001年には、安部医師無罪の一審判決が出ます。しかし、マスコミはこの判決を意外な判決として、依然安部医師クロ、の論調を変えません。検察側はさっそく控訴しました。その後、安部医師は公判中の2004年に体調不良で公判停止となり、翌2005年に病死します。

ご紹介が遅れましたが、この本の編者である弘中氏、武藤氏は安部医師の弁護団にいた弁護士です。一審では無罪を勝ちえたものの、世間からはシロと認められず依然クロのままで終わっていることに対し、その真実を分かってもらうために出版したと説明されています。

さて、私がこの本を読んだ感想です。確かに、私の知らない事実が沢山出てきます。私も安部医師有罪との印象を強く持っていたのですが、正直この本を読んで考えが変わりました。ただ、完全に無罪と言えるのかどうか、そこまでは分かりませんでした。

何故なら、この本に出てくる無罪の根拠が、全て本当なのかどうか、私には分からないからです。医療の専門家、法律の専門家でもない私の知識では測りかねる部分が沢山あります。

事件当時の安部医師有罪、と言う論調がメディア主導であったことは分かりました。しかし、本の編者が被告人の弁護士である以上、その視点は被告人擁護であるのは当然です。いかに客観的主張だと言われても、私自身が知識不足で判断出来ない部分においては、真実かどうかは分かりません。

本来ならば、この本の編者と、対立する側に立つ検察、メディアの主張もまた聞いてみたいと思いました。それぞれの主張がかみ合う議論が聞ければ、もっと理解も深まるだろうと思うのです。

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◇オススメポイント
「薬害エイズ」事件の真相を知りたい人、興味を持つ人にオススメです。過去にメディア誘導によっておきた報道被害はいくつかあります。記憶に残るところでは、オウム真理教が起こした松本サリン事件ですね。第一発見者で被害者でもあった河野義行氏がまるで犯人であるかのような偏重報道をされました。

本件においても、そういったメディアの勝手な思い込み報道があったことは多分事実なんだろうと分かります。しかし、安部医師が無罪だったのかどうか、私にはそこまでは分かりませんでした。

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◇管理人の満足度(あくまでも主観による独断と偏見の採点です)・・・・80点
安部医師が本当に無罪かどうかは別にして、報道されなかった「薬害エイズ」の別の側面が浮き彫りにされてきます。

関連記事:「薬害エイズ事件」・・「エイズの歴史」・・「ひと目でわかるエイズ年表」

「いきなりエイズ」を防ぐには、早くHIV検査を受ける以外に方法はありません。⇒ 「HIV検査があなたの命を救います」

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