今回は「エイズとソーシャルワーク」と言う本を読んだ感想を書きます。

この本が出版されたのは1997年8月です。1977年と言えばARTと呼ばれる抗HIV治療が導入され始めた年です。本の中でも少し出てきますが、まだ確立された治療法ではなかった時期です。

したがって、HIV感染症は数年先のエイズ、そしてそこから2、3年で死に至る致死的疾患として扱われていました。

そうしたHIV感染症、エイズ患者に対してソーシャルワーカーが果たすべき役割とは何か、存在意義とは何か、問題提起と共に編集者の思う回答が書かれています。

しかし、私がこの本を読んで一番印象に残ったのは、ソーシャルワーカーそのものについて書かれた部分ではありませんでした。

一体何が私の印象に残ったのか。おススメポイントで述べてみたいと思います。

『エイズとソーシャルワーク』小西加保留 編集代表 中央法規 1997年

 

◇本の目次

第1章 「エイズ」とソーシャルワーク

第2章 エイズとは

第3章 ソーシャルワークの価値と倫理

第4章 ソーシャルワーカーと組織

第5章 患者の心理社会的問題とソーシャルワーカーの直接的援助

第6章 対象者別の問題と援助のポイント

第7章 社会的対応と課題

第8章 社会資源

資料

 

◇本の概要

この本はソーシャルワーカー、医療関係者、福祉関係者など8名の筆者によって書かれたものです。冒頭にも書いたように本が出版されたのは1997年、まさに抗HIV医療が大きな変化点を迎えた時期でした。

この年を境にエイズで亡くなる患者は激減し、今日のようにHIV感染症は致死的疾患から慢性疾患へと変わっていきます。

ただ、本が執筆された時点ではまだHIV感染症は致死的疾患であり、現在よりもっとHIV感染者、エイズ患者への偏見と差別が激しい時期でもありました。

そんな時期に、ソーシャルワーカーが患者本人と家族を始めとする人間関係、また会社や職場を始めとする社会環境の間に入っていかに患者支援を行うか、それをテーマに書かれています。

 

 

◇おススメポイント

本来この本の読みどころは当然ですがソーシャルワーカーとしての役割、存在意義についてだと思います。しかし、この本が出版されてすでに20年が過ぎています。

先程も書いたように抗HIV医療もARTの導入によって予後が激変しています。そんな今の時代に読んでみると、一番印象に残ったのは当時のHIV感染者、エイズ患者の実例紹介記事です。

本の中に多数の実例が登場します。それらはソーシャルワーカーがいかに患者とかかわったか、問題に取り組んだかと言う実例です。

でもまだHIV感染症が致死的疾患だった時代ですから、HIV感染の告知は数年先の死の宣告に近いものがありました。

そんな告知を受けた患者がどうHIVと向き合ったのか、エイズと向き合ったのか、それがすごくリアルに書かれています。

HIV感染告知は例えばがんの告知などとは違い、患者は死と向き合う恐怖の他に性の問題、偏見や差別の問題を抱えることになります。

家族、友人、知人、職場などの人間関係もまた他の病気とは異なる問題を発生させます。

そうした問題にソーシャルワーカーとして対応することはとても重要な役割だったと思うし同時に難しい役割だったと思います。

そして何より、死の宣告をされたも同然のHIV感染告知を受けた患者の気持ちを読み取るとき、何とも辛い気持ちになりました。

同時に医学の進歩は本当にありがたいと心から思いました。

もしもHIV感染が致死的疾患のままだったら・・・。私自身、HIV検査を受けていただろうか、そう思いました。

どうせ治ることなく死んでゆくなら、HIV検査なんて受けたくない、そんな結論を出していたかも知れません。

この本を読んで色んなことを思い、考えました。

 

◇管理人の満足度(あくまでも主観による独断と偏見の採点です)・・50点

どうしても20年前に書かれたという時代ギャップはあります。出版時に読んでいたら100点だったと思います。

現在、この本を読む意味は当時の現実を知る、と言うことに尽きると思います。そして、それを知る意味は何か、と言えばそれは読む人によってみな違うでしょう。

私の思いはおススメポイントで書いた通りです。

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