HIV感染者のウイルス量測定を開発途上国においても進めようとする活動があります。

国境なき医師団(MSF)日本のプレスリリース(7月26日付)によると、開発途上国における抗HIV医療において、HIV感染者のウイルス量検査が十分に行われておらず、今後の課題となっているそうです。ニュースソースはこちら⇒『開発途上国でもウイルス量検査拡大を』

今回はこのウイルス量測定がなぜ重要なのか、検査の意義を考えてみたいと思います。

・・◇CD4数とHIV RNA量の2つの指標


当サイトで、『図解・HIV感染とCD4の推移』という記事を書きました。この記事の中で、HIV感染者の治療を行うにあたって、病状の管理指標としてCD4数とHIV RNA量の2つがあると書きました。詳しくはそちらの記事をお読み頂くとして、大ざっぱに言えば次のような意味を持つ指標です。

●CD4数
簡単に言うとあなたの免疫力を測る指標です。健康な人だと700から1300くらいあります。(単位や何を表す数値かは同記事を参照ください)このCD4数が減ってきて、350を下回ると危険領域として抗HIV薬を投与開始するひとつの目安になっています。

●HIV RNA量
あなたの体内にどのくらいHIVが存在するかを測る指標です。厚生労働省の「抗HIV治療ガイドライン」によると、HIVに感染して1週間から2週間くらいすると、血中のHIV RNA量は100万コピー/mLを超えるのだそうです。

抗HIV治療によって体内のウイルスを減らし、40~50以下にするのが治療の目標値となります。


・・◇もっとある、HIV RNA量測定の意義


今回、国境なき医師団(MSF)日本のプレスリリースによればHIV RNA量の測定には次の2つの意味があります。

1.抗HIV薬を医師の指示通りに服用しているか確認するため

現在の抗HIV医療はARTと呼ばれる多剤併用法が主です。この治療法によってHIVが体内で増殖することを防ぎ、徐々にその量を減らしていきます。残念ながら完全にゼロにすることは出来ませんが、検出限界の40以下にすることは可能です。(全ての患者において可能ではありません)

しかし、抗HIV薬は毎日決められた時間に決められた量を服用することが絶対条件です。これは患者にとってはかなりの負担であり、中には指示通りに服用出来ていないケースもあります。

HIV RNA量を測定することで、その数値が下がっていない患者を識別することが可能となり、患者に対して追加のカウンセリングを行うことが出来ます。同プレスリリースによれば、南アフリカ共和国の事例で、追加のカウンセリングを行い3ヶ月後に再度HIV RNA量を測定したところ、検出可の患者のうち71%が検出不可に改善されたそうです。


2.薬剤耐性を確認し、別の治療法への移行が必要な患者を特定するため

HIVというウイルスは容易に変異を繰り返すため、薬に対する耐性を得やすいウイルスです。そのために複数の抗HIV薬を同時に使って耐性が出来ないようにするのですが、実際にその効果を確認するにはHIV RNA量が指標の1つとなります。

ある薬をいくら服用しても効果がないとき、その薬に対してHIVが耐性を得ている可能性があります。その場合は別の薬を使用する検討が必要となります。もしもHIV RNA量の測定なしの場合、薬の効果を判断することが難しい訳です。

例えば日和見感染と思われる症状が改善されないとき、実はHIV RNA量は減少しており、薬は効いていることもあり得ます。しかしHIV RNA量の測定が出来なければ症状から判断するしかありません。本当は薬は替えなくてもいいのに、より高額な薬に替えたり、結果として薬の選択肢を狭くしたりします。


HIV RNA量の測定には以上のような重要性、意義があります。国境なき医師団(MSF)では開発途上国においても抗HIV治療の中でHIV RNA量の測定が出来るよう、資金を集めること、今後は新しい検査技術も取り入れることにしているそうです。

もしもあなたがHIVに感染して、CD4数が減少し、HIV RAN量が増えていくと数年後には「いきなりエイズ」を発症します。エイズ発症前に検査で感染が分かれば抗HIV薬によってエイズの発症を防ぐことも可能です。

*「生存率」・「いきなりエイズ」・「潜伏期間」

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