2011年1月6日に東京都福祉保健局から「エイズについてのインターネットアンケート」結果が発表されています。このアンケートは東京都が今後のエイズ対策を進める参考にするため、都民のエイズに対する意識調査を行ったものです。

調査期間は昨年、2010年の11月26日から12月6日までの11日間で、モニター人数は290名、そのうち197名から回答がありました。性別、年齢、職業などを幅広くモニターしています。

何しろ東京都は日本で一番人口の多い都道府県であり、HIV感染者、エイズ患者も多いのです。2010年の1月から9月までの統計を見ても、全国のHIV感染者の30.3%、エイズ患者の23.7%は東京都で報告されています。東京都がエイズ対策に力を入れているのも分かります。

アンケートは全部で19問あったのですが、その中から私が注目したものをいくつかご紹介したいと思います。アンケートは、それぞれの質問に対して、回答者が知っていたか、知らなかったかを答える形式です。

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質問:HIV検査は、感染の機会があってから60日(検査方法によっては90日)以降に検査する必要がある。

知っていたと答えた人 52.8%  知らなかったと答えた人 47.2%

HIV検査のウインドーピリオドについて質問しています。ほぼ半分近くの人は知らないと回答しています。この結果は、HIV検査そのものに対する意識が薄いことを示していると思います。保健所などのHIV検査案内では必ずウインドーピリオドについて注意を呼び掛けています。自分が一度でも検査を受けようと事前情報を集めた人は知っているはずです。

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質問:性器クラミジアなど他の性感染症にかかっているとHIVに感染しやすくなる。

知っていたと答えた人 47.7%  知らなかったと答えた人52.3%

クラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペス、梅毒、性器カンジダ症などの性感染症にかかっている人は、健康な人に比べると数倍から数十倍、HIVに感染するリスクが高くなります。性器に潰瘍などあると、更にリスクは高く300倍にもなると書かれた専門書もありました。

でも、この事実をご存知の人は二人に一人くらいです。たかがクラミジア、淋菌、などと軽く考えていると気がついたときにはHIVに感染していた・・・となりかねません。HIV感染予防の観点からも感染者が多い病気には注意しましょう。

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質問:適切な医療管理により、母子感染はほぼ防ぐことができる。

知っていたと答えた人 58.9%  知らなかったと答えた人 41.1%

2010年の1月から9月までの間に母子感染が2件報告されました。1件は飛び込み出産でHIV検査が出来ないまま出産されたケースで、もう1件は不明です。

予め母親のHIV感染が分かっていれば母親への抗HIV治療や産道感染防止の帝王切開など、色々な医療管理の元で赤ちゃんへの感染確率を1%程度にすることが出来ます。でも、これを知っている人は6割弱です。男性は自分が出産しなくても当然知っておくべき情報だと思います。

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質問:現在のHIV、エイズ治療法は複数の抗HIV薬を組み合わせて服用することにより、体内のウイルス量をコントロールする方法である。

知っていたと答えた人 32.0%  知らなかったと答えた人 68.0%

HAARTと呼ばれる多剤併用法です。1997年頃から日本でも開始され、それまではHIVに感染するとエイズ発症から死に至る病状を大きく改善させました。

HIVに感染してもエイズ発症前に治療を開始すればエイズの発症を抑える(遅らせる)ことが出来るし、エイズを発症しても免疫力を回復させることが出来るようになりました。ただし、薬を飲み忘れてしまうとウイルスに耐性が出来て効かなくなってしまう恐れがあります。

こんな治療法についてご存知の人は約3人に1人でした。

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質問:あなたがもし、HIV、エイズと診断されたら、そのことをあなたの職場に伝えますか?仕事をしていない、職場に通っていない人は、通っていたらと仮定して回答してください。

伝えると思う 20.3%   伝えないと思う 79.7%

伝えると思う人は約2割しかいません。伝えない理由もたずねているのですが、やはり差別と偏見が怖い、と言う回答が多く寄せられています。

事実、そうした差別的な処遇、偏見を持った扱いをニュースで目にすることがあります。HIV感染者、エイズ患者の治療は障害治療です。働く場を確保することはとても大事であり、職場の理解は不可欠ではないでしょうか。むろん、それは社会全体の理解の問題です。

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質問:保健所ではHIVと同時に他の性感染症検査も受けることができる。

知っていたと答えた人 56.3%  知らなかったと答えた人 43.7%

これは私も自分が保健所で検査を受けるまで知りませんでした。ほとんどの保険所ではクラミジア感染症、梅毒などの性感染症も無料、匿名で検査してくれます。ただし、保健所ごとに検査要綱が異なりますから、もしもあなたがHIVと同時検査を希望するなら事前に電話で確認してみてください。

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質問:あなたはこれまでにHIV検査を受けたことがありますか?

受けたことがある 18.3%  受けたことはない 81.7%

何とHIV検査を受けたことがあると回答した人は2割もいません。実は、このアンケートと同じ2010年にUNAIDS(エイズ合同計画)が世界25ヶ国でエイズに対する意識調査を行っています。日本でも調査が行われたのですが、そのときの調査項目の中に、こんな項目がありました。

質問:あなた自身はHIV感染のリスクがあると感じていますか?

回答:はい 13.1%  いいえ 63.0%  分からない 23.9%

今回のアンケート結果は、この調査結果とよく似ています。つまりHIV感染を自分自身の問題、起こり得るリスクと感じている人は2割もいないのです。

これは単にHIV検査を受けない、と言う問題に終わらず、日頃からHIVの感染予防に対する意識も薄い、と言うことにつながっている気がします。

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質問:HIV検査を受けたことがない人は、受けない理由は何ですか。当てはまるものを全て選んでください。

●HIV感染の可能性のある行為をしたことがないから  82.6%

●どこで検査を受けていいのか分からなかったから  9.3%

●検査を受けられることを知らなかったから  8.1%

●検査を受けてHIV感染が判明するのが怖いから 6.8%

●予約や検査を受けに行くのが面倒だから 6.8%

●自分が検査を受けるのに都合がいい検査機関がないから 5.0%

●「会社や学校を休めない」などのため、検査を受ける時間がないから 3.7%

●検査を受けに行く(または行った)ことを他人に知られたくないから  2.5%

●その他 6.8%

この結果を見て、私はかつての自分自身を思い出しました。かつての自分に思い当たることばかりです。HIV検査を受けない圧倒的多くの理由は「HIVに感染するようなことはしていない」と言うものです。

これは「セックスをしていない」と言うことでしょうか。そんなことはありません。「決まった人と、普通にセックスしてるから大丈夫」と言うことではないでしょうか。だとすれば、それはちょっと違うように思います。

コンドームを使用しないセックス、あるいはオーラルセックス、こういったHIV感染リスクのあるセックスを経験していても、自分だけは大丈夫、感染するはずがない、そう思っているのではないでしょうか。

もしもあなたもそうであれば、どうか一度はHIV検査を受けてみて下さ。いきなりエイズを発症した人は例外なく、「まさか自分が・・・」と絶句されるそうです。長年エイズ医療に携わっている国立国際医療センターの本田美和子医師がご自身の著書やネット上でその事例を紹介されています。

HIV検査を受けないその他の理由で、「HIV感染が判明するのが怖い」と言う気持ち、これは私も経験したので痛いほどよく分かります。保健所に検査に行けるのは、実は自分は感染していないと思っている人です。

本当に感染を疑い、悩んでいる人はそう簡単には検査に行けません。「疑い」が「感染」に確定するかも知れないと思うと足がすくむ思いです。

もし、今のあなたが同じ気持ちなら、どうか勇気を出してください。検査を先延ばしにしてもあなたにプラスになることは何一つありません。エイズ発症前に治療するチャンスが減るだけです。現在の抗HIV医療は進んでいます。エイズ発症前に治療を開始出来ればエイズ発症を抑えることもできます。

そして最後に、「他人に知られたくない」、「時間がない」、「都合のいい検査機関がない」と言う理由で検査を先延ばしにしているあなた。そんなことでためらっている場合ではありません。HIV感染からエイズ発症までの潜伏期間はどんどん短くなっているのです。ぐずぐずしている間にいきなりエイズを発症したらどうしますか。きっと後悔します。

どうしても保健所や病院に行けないと言う人は私も使ったHIV検査キットも検討してみて下さい。自宅で誰にも知られず、簡単にしかも確実に検査ができます。ご参考までに私が使ったキットをご紹介しておきます。

*保健所や病院に行かなくてもHIV検査は可能です

■自宅でHIV検査体験記

以上、東京都が行ったエイズに関する意識調査の結果をご紹介しました。あなたのお役に立てれば幸いです。


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