『国産エイズワクチン治験』のニュースが1月6日(木)付けの読売新聞に掲載されました。今回はこのニュースをあなたへお届けしたいと思います。

記事によれば、エイズワクチンの治験は、東京大学医科学研究所が中心となり、ディナベックと言う茨城県つくば市にあるベンチャー企業も参加しています。

ご承知のように、今のところエイズワクチンの開発に成功した研究者は誰もいません。エイズが登場してから30年近くになろうかと言うのに、未だにワクチンは完成していないのです。

本サイトでも、過去にエイズワクチン作成の難しさを取り上げています。例えば、「HIVのワクチンが出来る?」と言う記事がそれに当たります。詳しくはこの記事をご覧頂ければいいのですが、要するにエイズワクチンがなぜ難しいかと言えば、HIVが容易に変異を繰り返すウイルスだからです。

つまり、ワクチンとはウイルスに感染する前に毒性を弱めたウイルスに予め感染することによって、そのウイルスに対抗出来る免疫力、すなわち抗体を作って準備しておくことです。従って、HIVのように変異を繰り返すウイルスに対してはワクチンを作ってもすぐにその効力がなくなってしまうのです。

今回治験するエイズワクチンがその壁をどうやって乗り越えようとしているのか、そこは新聞記事にも詳しく解説がありません。私が一番知りたいのはそこなのですが・・・。

しかし、ワクチンそのものについてはもう少し解説されているので、それをご紹介しましょう。今回の治験の方法は、センダイウイルスをベクターとして使い、エイズウイルス(HIV)のたんぱく質を作る遺伝子を組み込み、それをHIV未感染者に注射します。ベクターとは「運び屋」と言う意味でHIV遺伝子を運ぶ役割を持つセンダイウイルスがベクターとなります。

すると注射された未感染者の体内では組み込んだ遺伝子からエイズウイルス(HIV)のたんぱく質が作られ、細胞がエイズウイルス(HIV)に感染した状態となり、これを攻撃する免疫細胞、すなわち抗体が作られます。これにより、本当にHIVに感染したとき、即座に抗体がHIVを攻撃して発症を防ぐことが出来る、と言う狙いです。

ちょっと気になったのですが、読売新聞には何度もエイズウイルスと言う表記が出てきます。一般にはこの表記が分かり易いのかも知れませんが、正確にはHIVであり、エイズウイルスなるものは存在しません。

それから、センダイウイルスについて説明しておきたいと思います。このウイルスは幼児の呼吸器に炎症を起こすウイルスで、1953年(昭和28年)に東北大学医学部(宮城県仙台市)の石田名香雄氏によって発見されました。発見された場所が仙台市だったので、センダイウイルスと名付けられました。

このセンダイウイルスを遺伝子治療に使う技術を開発したのが、先にご紹介したディナベック株式会社と言うベンチャー企業です。ディナベック社が開発した技術は、センダイウイルスをミクロのカプセルとして使い、様々なウイルスの遺伝子を人の体内に注入するものです。

例えば、今回のエイズワクチンの治験において、本当にHIVを注入すればHIVに感染してしまい、ワクチンになりません。抗体を作って免疫力をつけるのが目的なので、本当の病気にかかってしまっては意味がないですよね。あなたもインフルエンザワクチンは接種してもらったことがあると思いますが、それと同じことです。

そこで、本物のウイルスを注入せずに、抗体だけを作る技術が必要な訳です。ディナベック社では、センダイウイルスにHIVの遺伝子を組み替える技術を開発し、HIV遺伝子を体内に注入することを可能にしました。

ディナベック社のこの技術はエイズワクチンだけでなく、重症虚血肢遺伝子治療製剤、アルツハイマー病用ワクチンなどにも応用出来るそうです。詳しくはディナベック社のホームページをご覧下さい。

なお、今回の治験において東京大学医科学研究所とディナベック社の技術開発の分担、役割分担については詳細が分かりません。新聞記事の中には「ワクチン開発の中心となったのは感染研の俣野哲朗・エイズ研究センター長」とだけ書かれてありました。

取りあえず、私が新聞記事を読んで理解出来た範囲は以上のことです。最初に申し上げた通り、HIVが変異を繰り返すことに対して、どう対応しているのかは不明です。

ただ、新聞記事の中に、「従来のエイズワクチンに比べ、センダイウイルスは体内でより長期間働き続けるため免疫力を高める力が強い」と紹介されています。この内容が疑問の回答になっているのかも知れません。

この国産エイズワクチンの治験は、2012年にアメリカで始まるそうです。何とか成功して欲しいと願わずにはいられません。

今のところ、エイズワクチンは存在しない訳で私たちがHIVやエイズにどう立ち向かうかと言えば、まずは予防であり、次にHIV検査です。感染しないこと、エイズ発症前に治療すること、これが私やあなたの命を守る方法です。いつかエイズワクチンが完成する日まで、自分の身は自分で守るしかありません。

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あなたにとって早期のHIV検査がどれほど大事か、ぜひ次の記事をご覧ください。HIV検査を遅らせることであなたにプラスになるこは何ひとつありません。いかに危険ばかりが大きくなっていくか、お分かり頂けるはずです。

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