HIV感染者の治療における、「免疫再構築症候群」について、「Visual Dermatology 2月号」(秀潤社)の記事からご紹介したいと思います。

本サイトでもHIV感染者の治療についてはいくつかのページで取り上げています。現状ではHIVに感染すると完治させる治療法はないのですが低下した免疫力を回復させる治療法は見つかりました。それがHAART(highly active anti-retroviral therapy)と呼ばれる多剤併用法です。

かつてHAARTが開始されるまではHIV感染は不治の病であり、かつ致死的疾患でした。HIVに感染した患者の平均余命はわずかに7年だったのです。それが今では25歳でHIVに感染しても平均余命は40年と推定されるまでになりました。HAARTによってHIV感染で亡くなる患者は激減したのです。

しかし、このHAARTでは、開始当初は思ってもみなかった不可思議な現象が患者に現れました。HAARTを実施した多くの患者にサイトメガロ網膜炎や帯状疱疹が発生したのです。

サイトメガロ網膜炎とはサイトメガロウイルスによって起きる網膜炎で失明に至ることもあります。サイトメガロウイルスは健康な人でも体内に常在していることがあります。しかし免疫力が正常であればウイルスを抑えて発症することはありません。

同様に、帯状疱疹も原因となるウイルスが常在しており、免疫力が低下してきたときに発症します。サイトメガロ網膜炎も帯状疱疹もHIV感染による代表的な日和見感染症です。

すなわち、HIVに感染した患者が、免疫細胞を破壊されて免疫力が低下し、健康なときであれば発症しないこれらの病気を発症してしまうのです。

では、なぜHAARTによって、免疫力が回復するときにこれらの日和見感染症が発生するのでしょうか。ちょっと考えると理屈に合いません。実は、それが「免疫再構築症候群」と呼ばれる症状なのです。HAART開始の後になって、この概念によって理由付けがされたそうです。

HIV感染に感染すると、免疫細胞が破壊され、免疫機能不全に陥入ります。そこにHAARTを実施すると体内では急速にHIVの量が減り、免疫細胞が増加します。

それで日和見感染は回復するはずなのですが、急激に回復した免疫機能が、体内に存在するウイルスや細菌などに過剰に免疫反応することによって、症状が誘発される現象が起きるのだそうです。これが「免疫再構築症候群」です。

医療に素人の私には十分理解出来ないのですが、要するにいったん低下した免疫機能が、急激に回復したために、体内でじっとしていたウイルス、細菌に激しく反応するのです。その激しい反応によって、ウイルス、細菌が目を覚まして発症する、そんな理屈だと理解しました。

何とも私たち人間の免疫システムとは複雑怪奇、かつ繊細で高度な仕組みですね。到底私の理解の及ぶところではありません。

ですから、本来HAARTを開始するときには体内にウイルスや細菌が少ない状態で開始するのが理想なのです。しかし、HIVに感染している以上、時間が経てば免疫力はどんどん低下して、次々と日和見感染症を起こす可能性もあります。

従って、どの時点でHAARTを開始するか、判断に迷うケースもあるのだそうです。

以上、「Visual Dermatology 2月号」の記事から抗HIV治療における「免疫再構築症候群」についてご紹介しました。

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