新型エイズ・シャーガス病について取り上げてみたいと思います。
それほど最近のニュースではないのですが、今年の夏あたりからネット上にちょくちょく登場しているのが、『新型エイズ・シャーガス病』です。
例えばこんな記事が出ています。
さて、このシャーガス病とはいったい、どんな病気なのでしょうか。そして、ホントに新型エイズなのでしょうか?
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◇また出た「新型エイズ」?
「新型エイズ」と聞くと、どうしても思い出してしまうのが昨年(2011年)の「陰性エイズ」騒動です。けっこうネット上を騒がせましたが、いつの間にか話題に登らなくなっていました。⇒『陰性エイズ日本上陸?』
冒頭にご紹介した最初の記事など、かなりセンセーショナルですよね。
「新型エイズシャガス病が拡散!HIV初期症状との違いは?」
このタイトルだと、本当に新型エイズが現れてすでに拡散しており、従来のHIV感染症の初期症状との差を記事にしているのかな?と思いますよね。
ところが、実際にこの記事を読んで見ると、私には「新型エイズ」とは思えませんでした。
記事の中では専門家が「新型エイズ」と呼んでいると書かれています。具体的にどんな専門家なのかは不明です。また、「新型エイズ」という呼び名がどれだけ認知されているのかも不明です。
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◇シャーガス病とは?
では、新型エイズと呼ばれたシャーガス病とはいったいどんな病気なのでしょうか。先ほどご紹介した記事には詳しい病気の説明がなかったので、私が調べた範囲でここに説明致します。
シャガース病は、今から100年以上も前、1909年にブラジル人医師、カルロス・シャーガスによって発見されました。(病名の由来は発見者だったのですね)
シャーガス病はサシガメという吸血性の昆虫が媒体となって人間に感染します。サシガメとはカメムシの仲間のようです。⇒『サシガメ』
このサシガメが人間を刺すことで、「原虫トリパノソーマ」を血液中に感染させるのです。この原虫トリパノソーマは哺乳類、爬虫類、鳥類など、多くの動物に感染する原虫らしいです。⇒『原虫トリパノソーマ』
トリパノソーマは人間の血液中に入ると数年の長い潜伏期間を経て、リンパ節、脾臓、すい臓の腫脹や筋肉痛、心筋炎、脳脊髄炎、心臓障害を引き起こすそうです。⇒『シャーガス病』
また、別の記事によれば症状が悪化すると肥大化した器官が破裂し、死に至るそうです。世界中でみると毎年約1万4000人がシャーガス病で亡くなっているそうです。現状では確実に治すことが可能な治療法はないそうです。
日本国内ではシャーガス病という病名はあまり聞きませんが、中南米から来日した労働者からシャーガス病の患者が出ているそうです。
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◇結局、どこが「新型エイズ?」
記事を読んでも、どこが新型エイズなのかよく分かりませんでした。初期症状がエイズに似ていると記事には書かれているのですが、具体的にどういった症状が似ているのかは不明です。
恐らく、急性HIV感染症に見られる筋肉痛、リンパ腺の腫れなどが似ているとされているのでしょう。また潜伏期間が長く、自分が感染していることに気づきにくいこと、血液感染、母子感染があることも似ています。でも、シャーガス病では免疫不全にはなりません。
正直、今回の記事を読む限り、「新型エイズ」という呼び方はどうなのかなぁと思ってしまいます。ただ、シャーガス病が発見されて100年も経つのに、未だに命を落とす人が大勢いる現状からすると、この病気の治療法が早く見つかって欲しいと願わずにはいられません。
*「生存率」・「いきなりエイズ」・「潜伏期間」