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ここでは、HIVの感染ルートの中から異性間セックスによる感染ルートを取り上げてみたいと思います。
まず、最初に異性間セックスを含むHIVの感染ルート全体について確認しておきましょう。次の表を見て下さい。厚生労働省エイズ動向委員会が発表した、2008年末時点での、日本人HIV感染者、エイズ患者のデータです。
HIV感染者 | エイズ患者 | 小計 | 合計 | ||||
感染ルート | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 合計 |
異性間の性的接触 | 1,824 | 533 | 1,409 | 170 | 3,233 | 703 | 3,936 |
同性間の性的接触 | 4,928 | 3 | 1,388 | 2 | 6,316 | 5 | 6,321 |
静注薬物使用 | 24 | 1 | 15 | 3 | 39 | 4 | 43 |
母子感染 | 13 | 8 | 9 | 3 | 22 | 11 | 33 |
その他 | 146 | 32 | 102 | 18 | 248 | 50 | 298 |
不明 | 661 | 79 | 703 | 64 | 1,364 | 143 | 1,507 |
合計 | 7,596 | 656 | 3,626 | 260 | 11,222 | 916 | 12,138 |
2008年末時点の日本人国籍の累計HIV感染者・エイズ患者(エイズ動向委員会調べ)
2008年末の日本人HIV感染者とエイズ患者の合計は、12,138人でした。そのうち、男性同士の性的接触による感染者が、6,316人で、全体の52%を占めています。
なぜ男性同士の性的接触でHIV感染者が多いのでしょうか。それは、妊娠の心配がないため、コンドームの使用率が低いこと、そしてアナルセックスによって直腸にキズが入ると、そこから感染しやすくなること、などの理由によるものです。
関連記事:「HIV感染ルート」・・「HIV感染者・エイズ患者の現状」
そして、男女間の性的接触による感染者は3,936人で、全体の32%を占めています。では、この32%の中をもっと細かく見てみましょう。
10歳から5歳刻みで年齢層別に、HIV感染者とエイズ患者の人数をまとめたのが下の表です。
HIV感染者 | エイズ患者 | 小計 | 合計 | ||||
年齢層 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 | 合計 |
10歳-14歳 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
15歳-19歳 | 12 | 27 | 0 | 1 | 12 | 28 | 40 |
20歳-24歳 | 121 | 89 | 11 | 10 | 132 | 99 | 231 |
25歳-29歳 | 269 | 128 | 78 | 26 | 347 | 154 | 501 |
30歳-34歳 | 344 | 88 | 129 | 27 | 473 | 115 | 588 |
35歳-39歳 | 236 | 56 | 187 | 27 | 423 | 83 | 506 |
40歳-44歳 | 227 | 37 | 205 | 23 | 432 | 60 | 492 |
45歳-49歳 | 213 | 27 | 227 | 14 | 440 | 41 | 481 |
50歳-54歳 | 156 | 28 | 209 | 12 | 365 | 40 | 405 |
55歳-59歳 | 128 | 38 | 185 | 11 | 313 | 49 | 362 |
60歳以上 | 117 | 15 | 178 | 19 | 295 | 34 | 329 |
不明 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
合計 | 1,824 | 533 | 1,409 | 170 | 3,233 | 703 | 3,936 |
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いかがでしょうか。男女間の性行為で感染した人の年齢層別の分布が分かります。HIV感染者は20代後半から30代前半がピークです。エイズ患者は、40代から50代前半がピークです。これはエイズの潜伏期間が5年から10年と長いためだと思います。
どの年齢層でも男性のHIV感染者、エイズ患者が圧倒的に多いですね。男女の合計人数で比率を見てみると、次のようになります。
◇HIV感染者 男性 77.4% 女性 22.6%
◇エイズ患者 男性 89.2% 女性 10.8%
◇合計人数 男性 82.1% 女性 17.9%
以上のようになります。男女間の性行為で感染するのは、圧倒的に男性が多いと言う結果です。この原因は何でしょうか。異性間の性行為感染ですから、少なくとも感染機会については男女同数だったはずです。しかし、感染したのは男性が8割以上、女性は2割以下です。
エイズ動向委員会の報告書の中にも、特に男性の感染者、患者が多い理由については触れられていません。
最後に注目すべき点を2つ指摘したいと思います。まずは最初の1つです。ほとんどの年齢層で、男性の方がHIV感染者、エイズ患者ともに女性より多いのですが、15歳から19歳の年齢層だけは、逆転して女性のHIV感染者が多くなっています。
件数が少ないので、国内の感染事情全体をそのまま表しているかどうか、大いに疑問なところもありますが、低年齢層においては女性の感染も広がっていると見れるような気もします。
もう1点は、「いきなりエイズ」の発症率です。全ての感染ルートで見ると「いきなりエイズ」の発症率は32%です。しかし、異性間の性行為感染だけを見ると、「いきなりエイズ」の発症率は40%まで増えます。⇒「いきなりエイズ」
つまり、異性間の性行為で感染した人の方が、自分が感染したことに気が付いていない、と言うことです。根拠のない自信、自分だけは感染しないと言う思い込みがこのデータに表れているように思います。
先ほどの表の分布を見てもらって分かるように、HIV感染に年齢は関係ありません。若年層から高年層まで幅広くHIV感染者は広まっています。そして、表に出てこない感染者はこの何倍もいるはずです。
そして、感染してから数年の後、自分では気がつないままにエイズ発症を迎えてしまいます。実に感染者の5人に2人は「いきなりエイズ」です。
いくら抗HIV治療が進んだとは言え、早期発見、早期治療は基本中の基本です。感染の自覚症状がない以上は、自ら進んでHIV検査を受ける以外に感染の有無を知るすべはありません。
どうぞ、少しでも心あたり、不安があれば検査を受けて下さい。保健所では無料・匿名検査が可能です。検査キットを使えば自宅で誰にも会わずに検査が受けられます。あなたが一番いいと思う方法で検査を選んで下さい。手遅れになる前に。
「HIV検査のススメ」=「いきなりエイズ」を防ぐには、早期の検査でHIV感染をみつける以外に 方法はありません。=
HIV感染からエイズ発症までの潜伏期間がどんどん短くなっているデータをご存知ですか? でも、HIV感染は早期に発見できればエイズ発症を抑え る(遅らせる)ことができるようになりました。「いきなりエイズ」の前に、絶対HIV検査を受けてください。
・・増加する「いきなりエイズ」を防ぐには、早期にHIV検査を受ける以外に方法はありません。⇒ 「HIV検査のススメ」 |
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