2010年8月24日にエイズ動向委員会から発表になった2009年の動向報告をお届け致します。エッセンスをダイジェスト版でご紹介致しますので、2009年のHIV感染者、エイズ患者の動向がお分かり頂けると思います。

なお、2010年のエイズ動向報告については、2011年2月7日に速報が出されています。ご覧になりたい人はこちらからどうぞ。⇒「速報!2010年エイズ動向」

少し長い説明になりますので、目次を用意致します。お時間のない人は、興味のある項目だけでもご覧下さい。
本ページのデータは全てこちらから⇒「2009年エイズ発生動向年報」(エイズ動向委員会)

【 目 次 】

1.エイズ発生動向の概要

2.HIV感染者/エイズ患者の報告状況

3.HIV感染者/エイズ患者の感染ルート

4.HIV感染者/エイズ患者の年齢別分布

5.いきなりエイズ

6.HIV感染者/エイズ患者の病変

7.保健所における検査件数と相談件数

8.献血件数と陽性件数

◇総括・・・今回のデータから言えること

上記のように、詳しいデータを用意致しましたが、お伝えしたいことはたったの1つです。もしもあなたにHIV感染の不安があるなら、迷わずHIV検査を受けて欲しい。これだけです。

HIV感染からエイズ発症までの潜伏期間は短くなっています。そして、「いきなりエイズ」を発症してからの抗HIV治療ではその後の生存率は低くなるのです。詳しくはページ最後の「総括」をご覧ください。

今からお伝えするHIV感染者、エイズ患者の現状は決して遠い世界の人ごとではなく、あなたのすぐ身近、日常の中にあります。

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1.エイズ発生動向の概要

まずは、2009年に新規に報告されたHIV感染者とエイズ患者の件数をご紹介します。表1をご覧下さい。


(表1)新規HIV感染者とエイズ患者

まず、新規のHIV感染者の報告件数ですが、2008年よりも105件減って、1,021件でした。これは、2008年、2007年に次いで過去3番目に多い件数となっています。

一方、新規のエイズ患者報告数ですが、こちらは2008年と同数の431件で過去最高となっています。

新規のHIV感染者件数が減少していますが、保険所でのHIV検査件数も約15%ほど減少しているため、一概に感染が減少しているとは言えないようです。

なお、新規エイズ患者件数ですが、この件数は過去のHIV感染者件数とは重複しません。例えば、昨年HIV感染者として報告された人が、今年になってエイズを発症したとしても、新規エイズ患者にはカウントされません。その場合には、病変報告として、任意の報告となります。

関連記事
「HIV感染者・エイズ患者の病変」:病変だけをクローズアップして記事にしてあります。
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2.HIV感染者/エイズ患者の報告状況

では、ここからもう少し詳しく2009年の動向を見て行くことにしましょう。まずは、新規HIV感染者の報告件数を、過去からの推移で見てみることにします。


(図1)HIV感染者の推移

ご覧のように、昨年までほぼ右肩上がりの一直線で増加し続けていた新規HIV感染者ですが、昨年は減少に転じました。しかし、保健所などでのHIV検査件数が15%近く減っているため、一概には感染者が減っているとは言えません。検査件数の詳細については、7項で詳しく説明します。

同様に、エイズ患者の過去からの推移を見てみましょう。


(図2)エイズ患者の推移

男女の合計数としては、2009年は2008年と同数だったのですが、男性は16件増加でした。

次に、新規HIV感染者、エイズ患者の内訳をもう少し分析してみます。男女別、日本人・外国人別に分けた結果が以下です。


(図3)HIV感染者男女比率(外国人含む)

ご覧のように、外国人を含む新規HIV感染者では、95%が男性感染者でした。これは、男性の同性愛者にHIV感染者が多いと言う傾向が過去からずっと継続しているためです。どうして男性に感染者が多いのか、詳細はこちら⇒「HIV感染者はなぜ男性に多い?」

同様に、エイズ患者の男女比率を見てみましょう。


(図4)エイズ患者男女比率(外国人含む)

こちらもHIV感染者とほぼ同じ結果となっています。

最後に、日本人と外国人の比率を見ておきます。まず、HIV感染者からです。


(図5)HIV感染者 日本人・外国人比率


(図6)エイズ患者 日本人・外国人比率

HIV感染者もエイズ患者もほぼ同じ比率で全体の7%から9%が外国人です。

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3.HIV感染者/エイズ患者の感染ルート

さて、次はHIV感染者、及びエイズ患者の感染ルートを見てみましょう。まずは感染ルートの件数です。図7のグラフを見てお分かりのように、同性間の性的接触が694件で圧倒的に多くなっています。2009年においては、同性間の性的接触は男性のみで女性にはこの感染ルートはありませんでした。

異性間の性的接触は、210件となっています。


(図7)HIV感染者の感染ルート別件数

これを感染ルート別の比率で見ると、図8のグラフとなります。


(図8)HIV感染者の感染ルート別比率

上のグラフを見てお分かりの通り、同性間の性的接触による感染が、約7割となっています。異性間と合わせて、性的接触による感染が全体の9割近い比率です。

次にエイズ患者の感染ルートについて同様に件数と比率を見てみます。図9をご覧下さい。エイズ患者においても、同性間の性的接触が210件で最も多く、次いで異性間の性的接触の132件となっています。


(図9)エイズ患者の感染ルート別件数

感染ルート別の比率で見ると、図10のようになります。


(図10)エイズ患者の感染ルート別比率

全体の約半分が同性間の性的接触による感染です。異性間と合わせて性的接触による感染が80%となっています。

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4.HIV感染者/エイズ患者の年齢別分布

それでは、HIV感染者とエイズ患者は、どんな年齢層が多いのでしょうか。年齢層別に見てみましょう。

まずはHIV感染者からです。図11を見て下さい。


(図11)HIV感染者 年齢別分布

図11から分かるように、20代から40代に多く感染者が分布しています。しかし、50代、60歳以上にも感染者は広く分布しており、いつ、どこで、誰が感染してもおかしくない病気だと分かります。

同様に、エイズ患者での年齢別分布を見てみましょう。図12をご覧下さい。


(図12)エイズ患者 年齢別分布

エイズ患者はHIV感染者よりも年齢が高い方に分布が広がっています。これはエイズ発症までの潜伏期間を考えると納得出来ます。50代、60歳以上での新規エイズ患者が多いのが目につきます。

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5.いきなりエイズ

次に、いきなりエイズの発生率を見てみましょう。いきなりエイズ、と言うのはHIVに感染している人が、自分のHIV感染に気が付かず、そのまま放置して、文字通りいきなりエイズを発症してしまうことを言います。

現在ではHIV感染が早期に分かれば、早期治療によって免疫力低下を抑えることができ、エイズ発症を防ぐことが出来るようになっています。

しかし、いきなりエイズの場合には、すでに免疫力がかなり低下して発症に至っている訳で、そこからの治療はより困難になります。なので、いきなりエイズを防ぐためにも、HIV検査は重要です。

さて、いきなりエイズの発生率をご覧頂きましょう。図13をご覧下さい。


(図13)いきなりエイズ発生率

図13では、HIV感染者、エイズ患者を棒グラフで表し、いきなりエイズ発生率を折れ線グラフで表しています。いきなりエイズの発生率はここ数年、ずっと30%前後で推移しています。

つまり、HIVに感染した人の、3人に1人は自分がHIVに感染していることに気付かず、いきなりエイズを発症していることになります。この発生率、高いと思いませんか?

国立国際医療研究センター病院の本田医師も言われていますが、いきなりエイズの患者さんのほとんどは、「まさか自分が・・・思ってもみなかった。」そう言われるのだそうです。しかも近年、エイズ発症までの潜伏期間は短くなっており、よりいきなりエイズの危険が高くなっています。

関連記事
「いきなりエイズ」:「いきなりエイズ」をクローズアップして記事にしてみました。
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6.HIV感染者/エイズ患者の病変

さて、5項までは新規のHIV感染者、エイズ患者の動向をご紹介してきました。それでは、2008年までに報告されたHIV感染者やエイズ患者は、その後どうなったのでしょうか。このデータをご紹介しましょう。ただし、条件付きです。

毎年、エイズ動向委員会から発表されるHIV感染者、エイズ患者の件数は全国の保健所や医療機関などを通じて全数漏れなく報告されます。それは、「新感染法」によって、7日以内の報告が義務付けられているからです。

しかし、その後の報告については、任意の報告となっており、必ずしも全ての状況が把握出来ている訳ではありません。HIVに感染していた人がエイズを発症したり、エイズを発症していた人が亡くなったりする病変については任意報告なのです。

そこをご承知おき頂いた上で、図14をご覧下さい。


(図14)HIV感染者・エイズ患者の病変件数

任意報告であり全件はどうか不明ですが、これを見る限り年々病変件数は減っています。かつてはHIVに感染すれば5年から10年の潜伏期間を経てエイズを発症し、2年後には死に至る、致死的疾患でした。それを思えば、医学の進歩はすごいと思います。

いまだに完治することは出来ないし、HIVを完全に駆除することも出来ませんが、しかし適切な治療下においては普通に生活が継続出来るようになりました。ただ、治療の開始時期が遅れると、治療開始後の生存率は下がります。やはり、早期発見、早期治療が何より大事です。

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7.保健所における検査数と相談件数

続いて、6項でもお話した早期発見、早期治療には欠かせない保健所などにおけるHIV検査の実態を見てみましょう。

図15をご覧下さい。

(図15)保健所におけるHIV検査件数と相談件数

2008年までは検査件数も相談件数も増加していましたが、2009年は15%ほど減少しました。この原因は、新型インフルエンザの影響が大きいと言われていました。

確かに、保健所も新型インフルエンザ対策に追われてHIV検査まで手が回らない状況もあったと思います。また、私たちも感染の可能性がある場所に行くのはなるべく避けました。保健所は確かに行きたくない場所です。

しかし、2010年になって、新型インフルエンザがひと段落してもなお、保健所でのHIV検査は低調です。こうなると、新型インフルエンザだけの影響ではなく、社会全体がHIVに対して関心が薄れているのではないかと思われます。

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8.献血件数と陽性件数

次は、全国の血液センターなどで行われている献血の件数と、その中から見つかったHIV陽性件数をご紹介します。図16をご覧下さい。


(図16)献血件数とHIV陽性件数

図16には過去22年間の献血件数と、その中から見つかったHIV陽性件数がグラフになっています。こうして見ると、献血件数は年々減少傾向にあり、HIV陽性件数は逆に増加傾向にあることが分かります。

潜在的なHIV感染者が多くなっているのか、HIV検査を目的として献血を受ける人がいるのか。しかし、このサイトでも幾度となく記事にしてきましたが、献血を受けてもHIV検査の代わりにはなりません。

どうぞ皆さんはHIV感染が少しでも心配、不安であれば保健所へ行って下さい。どしても保険所に行けないのなら、自宅で検査キットを使う方法もあります。間違っても献血を代用しないようにお願いします。

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◇総括・・・いきなりエイズを防ぐには早期のHIV検査しかありません

以上、2009年のHIV感染者、エイズ患者の動向報告をお届け致しました。記事のデータは全てエイズ動向委員会の報告書を元に管理人がグラフ化したものです。

なお、2010年のエイズ動向報告については、2011年2月7日に速報が出されています。ご覧になりたい人はこちらからどうぞ。⇒「速報!2010年エイズ動向」

日本では未だにHIV感染者は増加傾向にあり、HIV感染者の約30%は自分の感染に気がつかないまま「いきなりエイズ」を発症しています。これが日本の実態です。

管理人はいつも思うのですが、HIV感染者って本当はどのくらいいるのだろう?ここに載せたデータは、エイズ動向委員会から発表になったものだけであり、実際には検査を受けずに感染している人が沢山いるんだろうな、と思います。

自分が感染していることに気づいていなければ、大事な人にうつしてしまうかも知れないし、早期治療も受けられない。だから、もしあなたにHIV感染の不安があれば、HIV検査を早く受けて欲しいと思います。

私は以前読んだ、本田美和子さんの著書に出てくる女性の一言が忘れられません。

『「自分は平気だ」と思っている人ほど、検査を受けに行くと思う。私は怖くて怖くて、ほんとに感染していたらどうしようと思うと、その一歩が踏み出せない。』

まさに、その通りだと思います。確かに、HIV検査を受けて結果が陽性かも知れないと思うと、とても怖いし不安にもなります。私も3ヶ月間不安に悩みました。でも、HIV検査を受けずに 「いきな りエイズ」を発症することはもっと怖い。

でも、HIV感染は早期に発見できればエイズ発症を防ぐことも可能になっています。あなたはどうかそのことを忘れずに勇気を出してHIV検査を受けて欲しいと思います。

最後に、私が自分のHIV感染を疑ったときに使用した検査キットをご紹介します。信頼性、安全性には全く問題ありませんでした。

あなたが保健所に行く時間がなかったり、誰にも知られず、誰にも会わずにHIV検査を受けたいと思うならこれがお勧めです。

*保健所や病院に行かなくてもHIV検査は可能です

■自宅でHIV検査体験記

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