TOP コラム一覧コラム(検査/治療)>HIVのワクチンが出来る?


ここ数日、ネット上でいろんなニュース、ブログで取り上げられている「HIVのワクチンが出来る?」と言うお話を、ここでも取り上げて分かりやすく説明したいと思います。

そもそもの発端は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)などの研究チームが、米科学誌サイエンス(電子版)に8日、発表した同チームの研究成果です。

その発表内容は次のようなものです。

「HIVに感染したがエイズを発症していない60歳の男性血液から、HIVに有効な2種類の中和j抗体を発見した。これまでにHIVの変異ウイルスとして報告されているウイルスの約90%に結合して無力化することを確認した。この中和抗体発見はHIVワクチンの開発に大きく貢献するであろう。」

以上のような内容です。色んなニュースで取り上げられていますが、その1つをご紹介します。

こちらから⇒「中和抗体はHIVワクチン開発の希望の光か」

つまり、この記事の最大のニュース性は、世界中の科学者が開発を試みて未だに誰も成功していないHIVのワクチン開発に、希望の光を当てた、と言う点です。

1981年、アメリカでエイズ患者が見つかり、1984年にはHIVがその原因として特定されました。その時点では、すぐには困難かも知れないがワクチンもやがて開発されるだろうと思われていました。事実、世界中で科学者がエイズワクチン開発に望み、色んなワクチンが試されて来ました。しかし、どのワクチンも決定的な効力はなく、未だにHIV感染を予防することは出来ません。

では、ここでは、ワクチンとはそもそも何か?なぜHIVのワクチンはそれほど難しいのか、この2点からお話していきましょう。

1.ワクチンとは何か?
人が病気(感染症)にかかることを防ぐために、その病気の抗体を作り出すことを目的として予め接種される医薬品をワクチンと言います。つまり、病気に感染するのを防ぐため、予め模擬的に病気を発症させて抗体を作っておくのです。そうすると、本当にウイルスが体内に侵入してきても、すでに体内に抗体があるのでウイルスを撃退して病気を発症するのを防ぐことが出来ます。

さて、皆さんは、エドワード・ジェンナーと言う医師をご存じでしょうか。18世紀の終わりに天然痘のワクチンを初めて開発した医学者ですね。当時ヨーロッパで猛威を振っていた天然痘に対して画期的な威力を発揮しました。これがワクチンの第1号だったそうです。

その後、ルイ・パスツールによってワクチンを作る技術が進み、様々な感染症に応用される道が開けました。そして今日、色んなワクチンが感染予防に役立っているのです。私たちの身近なところでは、インフルエンザ、日本脳炎、百日咳、麻疹(はしか)、風疹(ふうしん)などのワクチンがあります。

2.なぜ、HIVワクチンは作るのが難しいのか?
世界中でHIVワクチン開発チームが組織され、膨大な研究費をかけているのに未だにワクチンが完成しないのはなぜでしょうか。それは、HIVと言うウイルスが非常に変異しやすいウイルスだからです。

HIVは自分だけでは増殖することは出来ず、取り付いた宿主の細胞を利用して自分のコピーを作っていきます。このとき、元々の遺伝子とは異なる遺伝子を持ったHIVがコピーされるのです。

それゆえ、ある種のHIVに有効なワクチンが作れても、そこで生まれた抗体はその種のHIVにしか効かず、新たに変異して生まれたHIVには無力なのです。このHIVの変異性のために未だにワクチンが作れないのです。

3.今回のニュースのどこが希望の光なのか?
すでに報じられている通り、HIVが次々に変異を繰り返して誕生するウイルスの約90%に対して有効な中和抗体が見つかった、と言う点が希望の光です。中和抗体とは、HIVが人の細胞内に侵入するのをふせぐ役目をするもので、免疫細胞によって作りだされます。

この中和抗体を作りだすワクチンが完成すれば、予め人に接種することにより、HIVが体内に入ってきても感染するのを防ぐことが出来ます。中和抗体は、HIVが細胞内に侵入しようとするのを邪魔して、侵入させないのです。HIVは自分のコピーを作って増殖することが出来ないので、私たちはHIVに感染する心配がありません。

さて、今回のニュースではHIVに有効な中和抗体が見つかった、と言うことであり、ワクチンが完成した、と言うニュースではありません。素人の私には分かりませんが、まだまだ医学的に難しい難問を沢山解決する必要があるのでしょう。

しかし、今回の発見がその険しい道のゴールを示す灯りとなってくれればと思います。

関連記事:「エイズ治療について」・・「エイズの歴史」・・「感染するとどうなる?」

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