最近私は、「HIV感染者の早期発見と社会復帰のポイント」(医薬ジャーナル社)という本を読みました。本の編集をされたのは岡慎一氏といって、エイズ医療では大変実績のある有名な医師です。現在、国立国際医療センター戸山病院エイズ治療・研究開発センターのセンター長をされています。これまでに沢山の著書も出されており、私もその何冊かを過去に購入して読みました。

今回は「HIV感染者の早期発見と社会復帰のポイント」の中から、「HIVをうつされる人の人権が軽く扱われている」という岡氏の指摘についてご紹介したいと思います。

この本の中で、岡氏はいくつかの具体例を上げてHIVをうつされた人間よりもうつした人間の人権の方が大事にされていると、HIV医療の在り方を厳しく指摘されています。例えば、HIVに感染した男性患者の精子の中にどのくらいのウイルスが含まれているか、全く調べようとしない医師がかなりいるそうです。

なぜそれが「HIVをうつされる人の人権」にかかわるかと言えば、その男性の精液中のウイルスを調べることによって、セーファーセックスの取り組みが変わってくるからです。すなわちパートナーに二次感染することを防ぎ、パートナーの健康を守るためには必要な検査なのです。

しかし、「患者の精子を採取するのは不可能に近い」と言って検査を行わない医師が現実に沢山いるのだそうです。確かに血液中のウイルス量はどこの病院、どんな医師でも調べます。しかし、必ずしも血液中のウイルス量と精液中のウイルス量はイコールではないのだそうです。そして、性行為で感染するのは血液中のウイルスではなく、精液中のウイルスです。

岡氏は、不妊症治療の患者の例をあげ、精液を採取することなどその気になって患者を指導すればたやすいことだと指摘されています。それをやらないのは、HIVをうつす立場にある感染者の人権に気を使って、うつされる可能性があるパートナーへの人権配慮が欠如していると指摘されています。

ここで本の中からあるデータをご紹介しましょう。岡氏がセンター長をされているエイズ治療・開発センターの2005年の調査データです。それはHIVに自分が感染したことを認識した感染者に対して行ったアンケート調査です。(調査母数は不明)

まず、自分がHIVに感染していたことを、パートナーへ告げたか、という質問です。

◇告げた・・・34% ・・・・◆告げていない・・・37%

次に、コンドームの使用率に関する質問です。

◇毎回着用する・・・20% ・・・・◆毎回ではないが、50%以上着用する・・・40%

最初にお断りしましたが、この調査対象は自分で自分がHIVに感染していることを認識している人です。このアンケート結果に対して、岡氏は、これではHIV感染の拡大は止まらないと危機感をつのらせると同時に、自分の相手に対して感染させてはいけないという思いやりがないと指摘されています。

1989年1月「エイズ予防法」という法律が出来ました。日本でもエイズ患者が見つかり、日本中が大パニックになった頃です。今ではこの法律はもう廃止されているのですが、HIV感染者やエイズ患者を徹底的に管理下において、二次感染を防ぐことに主眼が置かれた法律でした。

この法律ではHIV感染者やエイズ患者の人権がかなり不当に扱われていたと評価されています。現在の「感染症法」ではそうした不当部分が改善されています。

その一方で、今度はHIV感染者からHIVをうつされてしまう人の人権問題はどうなるのか、といった問題が出てきます。先ほどのアンケート結果にもありましたが、自分がHIVに感染したことを知っても、自分のパートナーにその事実を告げない人が37%もいて、告げる人よりも多いのです。

HIVをうつされたかも知れないパートナーは、何も知らずに検査も治療も受ける機会を与えられることもなく、最悪の場合には「いきなりエイズ」を発症します。うつした本人は抗HIV治療を受けてエイズ発症を防いでいるのに、うつされた方がエイズを発症してしまうなんて、どう考えても不公平な話であり、うつされた人の人権は尊重されていません。

ましてや、HIVに感染したことを知っているのにコンドームを毎回つける人がわずかに20%しかいないというのはどういう神経でしょうか。故意にHIVをうつしていると言われても仕方ない行為です。相手の人権を全く無視しています。

かつてHIVに感染するとほとんど死ぬしかない時代には、自分の感染を知って自暴自棄となり、誰彼かまわずうつした人がいたと聞きます。それも当然許されることではありませんが、現在では早期に治療すれば完治しないまでもエイズ発症を防ぐことは出来ます。にもかかわらず、相手にHIV感染の事実を告げないのはまったくもってひどい話です。

岡氏の指摘はこの他にも具体的な事例をいくつか上げて続ききます。かなり専門的な内容もあって、素人の管理人にはその全てを理解することは出来ませんでした。しかし、ここに上げたアンケート結果は少なからずショックでした。

当然、HIV感染者、エイズ患者の人権は尊重されるべきです。エイズパニックの頃のような不当な差別や偏見はなくすべきです。しかし、岡氏は本の冒頭でこう指摘されています。

「エイズが人権問題化され過ぎている。性感染症の問題としてとらえ、解決していく取り組みが余りに不足している。」

それはエイズが日本に現れた当時、エイズパニックが起きたり、薬害エイズ事件が起きたため、性感染症としてのエイズ、という視点が足りないまま今日に至っていると岡氏は書かれています。確かにその指摘は当たってるように思いました。

HIVをうつされる人の人権問題、あなたはどう考えますか?

現状においては、HIV感染からあなたの身を守るのは感染予防と早期の検査、この2つです。不幸にしてあなたのパートナーに不安を感じるなら、迷わずHIV検査を受けて下さい。岡氏は同じ本の中で、HIV感染からエイズ発症までの期間が短くなっていることも指摘されています。「いきなりエイズ」の前にHIV検査を受けて下さい。

ただ、HIV検査は簡単に受けられる人と、そうでない人がいます。もしもあなたがHIV検査をためらっているようなら、ぜひとも管理人からのメッ セージを 読んで欲しいと思います。3ヶ月間もHIV検査を迷って悩んだ管理人からの本気のメッセージです。もしかしたら、あなたがHIV検査を受けるきっかけにな れるかも知れません。

あなたにHIVの不安があれば 今すぐお伝えしたいメッセージいきなりエイズを防ぐ方法はこれだけです。

「いきなりエイズ」を防ぐには、早くHIV検査を受ける以外に方法はありません。⇒ 「献血で防げない・いきなりエイズ」


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