TOP コラム一覧コラム(ニュース編)>HIV故意にうつせば罪になる?


今回は、HIVを故意に誰かにうつしたら罪になるのかどうか、お話したいと思います。

つい先日、あるニュースがネット上でかなり取り上げられていました。それは、ドイツの人気ポップスグループの女性歌手が、自分がHIVに感染していることを知りながら、3人の男性とコンドームなしでセックスを行い、そのうちの1人はHIV感染が確認されたと言うニュースです。

ドイツでは、自分がHIVに感染していることを隠してセックスを行い、相手をHIV感染の危機にさらした行為は罪に問われるのです。この女性は、名前をナジャ・ベナイサと言い、28歳で子供が一人います。人気ポップスグループ「ノーエンジェルス」のメンバーでした。ナジャは危険な行為は認めていますが、故意に相手にHIVをうつそうと思ったのではないと言ってるそうです。

でも、自分がHIVに感染していることを知っていて、コンドームを使わなければ故意だと言われても仕方ないのではないでしょうか。相手には自分がHIVに感染していることを隠している訳ですから。

詳しい記事はこちら⇒「HIV感染隠し性交渉した独歌手 裁判で涙の謝罪」

さて、ここからが今回の本題です。では、日本において、故意にHIVをうつそうとする行為は、罪に問われるでしょうか。また、問われるとしたら、罪状は何でしょうか。

実は、この問題は本サイトの姉妹サイトである「性感染症(性病)検査完全ガイド」ですでに取り上げたことがあったのです。そのときの記事がこちら⇒「性感染症をわざとうつしたら罪?」

このときの記事ではHIVに限定せずに性感染症全般で考えてみました。今回、ちょうどナジャの記事があちこちで取り上げられているので、改めて本サイトでもう一度考えてみたいと思います。

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1.旧「性病予防法」では・・・

昭和23年に、「性病予防法」と言う法律が出来ます。この法律は平成10年に廃止となるのですが、性病を予防し国民の公衆衛生の向上を図るのが目的とされていました。

この法律の中に、性感染症を故意に誰かにうつすと罪になると書かれてあります。内容をちょっとご紹介しましょう。ただし、先ほども書きましたが、この法律は平成10年に廃止されていますので、念のため。

第8章罰則

第26条⇒感染の恐れがある性病にかかっている者が、売春行為を行ったときは、2年以下の懲役、又は1万円以下の罰金に処する。

第27条⇒売春行為を行う者が、感染の恐れのある性病にかかっていることを知りながら、お客の斡旋をしたり、場所の提供を行った場合には、3年以下の懲役、又は2万円以下の罰金に処する。

この第26条、第27条は対象が風俗従事者ですね。売春行為そのものが違法なのに、この法律で更に罪が重くなるってことでしょうか。

第28条⇒感染の可能性がある性病にかかっている者が、性交、授乳、その他病毒を感染させる恐れがある著しい行為をしたときは、1年以下の懲役、又は5千円以下の罰金に処する。ただし、行為の相手から告訴されなければ起訴できない。

この第28条は風俗とは関係ありません。私たち、みんなに適用される法律だったのです。この法律が今も存在すれば、HIV感染を知っていて故意に誰かにうつそうとする行為は、例え未遂に終わって感染しなくても罪になります。ただし、訴えられれば、ですが。

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2.現「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では・・・

「性病予防法」は平成10年に廃止されるのですが、代わって新しく出来た法律が「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」と言う、名前の長い法律です。

この法律は、「伝染病予防法」、「性病予防法」、「エイズ予防法」、この3つの法律を1つに集約して出来たもので、平成10年に施行されました。この法律の罰則規定には、先の「性病予防法」のような、誰かに性感染症をうつしたら罪になる、といった内容はありません。(私が調べた限りではありません。)

ちなみに、「エイズ予防法」の中にも、HIVを誰かに感染させたら罪になる、などといった罰則規定はありませんでした。

さて、そうすると、新しい法律においてはHIVやその他の性感染症を故意に誰かにうつしても、何も罪に問われることはないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。やはり罪に問われる可能性があるのです。

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3.「傷害罪」の適用・・・

実は、性感染症を誰かにうつしたら、「傷害罪」に問われる可能性があるのです。私たちが一般に持つ「傷害罪」のイメージは、誰かを殴ってケガをさせた場合のような、形としてのダメージです。しかし、法的にはもっと広範囲に適用されます。

例えば、精神的なダメージを与えたり、吐き気やめまいを起こさせたりした場合にも「傷害罪」が適用されることがあります。そして、性感染症を故意に感染させると、まさしく「傷害罪」で訴えられる可能性があるのです。

ちなみに、「傷害罪」で有罪判決となると、15年以下の懲役、又は50万円以下の罰金となります。

では、自分がHIVやその他の性感染症に感染しているこを知らずに、誰かにうつしてしまった場合はどうでしょうか。知らなかったんだから、仕方ない?

この場合には、「過失傷害罪」で罪を問われる可能性があります。自分の感染を知らずにウッカリうつしてしまった、その過失を問われるのです。こちらの刑罰は、30万円以下の罰金、または科料(1000円以上、10,000円未満)となっています。

でも、考えてみると、性感染症をうつされた場合に、よほど明確な証拠がないと有罪に持ち込むのは難しいでしょね。なぜなら、感染の相手や日時を特定することが、とても困難だと思うからです。

以上は、法律には全く素人の私が調べた結果なので、不正確、不適当な内容が含まれているかも知れません。何かお気づきの点がありましたら、お手数ですがご連絡下さい。

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